ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

手掌や手指を用いて体表を摩擦したり,圧迫を加えて血液やリンパの循環をよくし,新陳代謝を盛んにして,神経や筋肉の機能を促進する技法。その手技には,軽擦法,強擦法,揉捏法 (筋肉を指ではさみ,こねるようにする方法) ,叩打法,振戦法のほか,圧迫法,伸展法 (関節に用いる) がある。マッサージの歴史は古く,ヒポクラテスはこれを医者の必修技術としていたという。日本では「あんまマッサージ指圧師,はり師,きゅう師等に関する法律」によって資格を与えられたマッサージ師が,患者の依頼または医師の指示によって施術する。
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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

あはき法は、医師以外の者で、マッサージを業とする場合は免許を受けなければならない、と定めている。判例によれば、無資格者の施術のうち「健康に害を及ぼす恐れのあるもの」は処罰対象となるが、資格の有無による施術の範囲に明確な基準はない。ただし、無資格の業者が法律に基づくマッサージが受けられる、と誤認させるような宣伝をしている場合は景品表示法に違反する可能性がある。
(2013-09-24 朝日新聞 朝刊 2社会)

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デジタル大辞泉の解説

主に手で、皮膚や筋肉をさすったり、もんだり、たたいたりして刺激を与え、新陳代謝をよくし、機能を回復させて治療を図ること。「全身をマッサージする」
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百科事典マイペディアの解説
手で患者の体に種々の操作を加え,循環機能を盛んにし,皮膚・筋肉などに刺激を与え,筋力の回復,変形の矯正,関節機能の回復などをはかる療法。基本技に,手のひらで軽く圧しつつ摩擦する軽擦法,強く摩擦する強擦法,筋肉をもみ,こねる揉捏(じゅうねつ)法,リズミカルにたたく叩打(こうだ)法,肘(ひじ)などをつけてふるわせる振顫(しんせん)法などがある。これらの手技を組み合わせ,一般に体の末梢部から心臓に向かって施術する。各種麻痺(まひ)症状の治療,整形外科医療の後療法のほか,一般に疲労回復,健康増進に利用される。マッサージを業とするには,〈あん摩マッサージ指圧師〉として,厚生大臣の行う資格試験に合格し免許を得なければならない。

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世界大百科事典 第2版の解説

おもに手指や手のひらで,皮膚をさする,もむ,たたく,押すなどして行う治療法。最も古くから行われてきた治療法の一つで,東洋医学でもあんまや指圧療法などで行われてきた。西洋医学で行われる理学療法の一つとしてのマッサージは,フランス,ドイツなどで発達し,日本へは明治中期に伝えられた。 マッサージは運動療法とともに行われることが多いが,この両者は区別すべきである。マッサージには,機械的効果(圧迫と緊張),化学的効果,神経反射,心理的効果がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

おもに手を用いて直接体表面から一定の方式と方法により力学的刺激を加え、機械的あるいは反射的にさまざまな生体反応をおこし、身体の変調を整えて病気を治療したり健康を増進させる施術をいう。

 マッサージはギリシアのヒポクラテスがその重要性を説いたといわれるように、もっとも古くから行われてきた治療法の一つであり、現代の理学療法の最初のものといえる。主としてフランス、ドイツ、デンマーク、スウェーデンなどのヨーロッパ諸国で発達し、とくに北欧ではスポーツマッサージとして知られていたが、治療用マッサージとしては16世紀後半から19世紀末にかけ体系づけられた。日本にはフランス流マッサージが明治中期に伝えられたが、その後ドイツ医学の流れをくむものが採用されてきた。一方、中国で発祥したあんま(按摩)が朝鮮半島を経て伝えられ、日本独特の発展をしてきた。このマッサージとあんまは西洋医学と東洋医学という原則的な違いはあっても、その手技はよく似ており、しだいに総合されて、今日では、ともに「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」によって規制されている。ただし、リハビリテーション医学の分野などでは西洋医学からのものが主体となっており、理学療法におけるマッサージは運動療法の補助的手段として用いられ、医師の適切な指示が必要とされている。

 マッサージは、神経や筋肉の解剖・生理学的知識を基に、主として手指や手のひらを用い、患者の手先や足先から心臓に向かって求心性に手技を施すのを原則とする。しかし、神経麻痺(まひ)に対しては末梢(まっしょう)神経に沿って遠心性に行うこともある。この手技により局所の静脈血やリンパの還流が促進され、同時に動脈血の流入を盛んにして血行が改善される。その結果、浸出物の吸収が促されるとともに組織や器官の代謝も盛んになり、疲労の回復を早め筋肉の機能を亢進(こうしん)させるほか、触圧刺激が神経を刺激して鎮痛的に働き、麻痺した神経の回復を促し、また内臓の機能の変調を整える効果も現れる。

 以下、おもな手技について述べる。

(1)軽擦法 手のさまざまな部分を患者の皮膚に密着させ、求心性に軽くなでさする方法で、循環系に対して効果があり、患者に爽快(そうかい)感を与え精神的安静をもたらす。より強い刺激を与える他の手技の準備段階としてマッサージの最初に行われる手技である。

(2)強擦法 指先とくに母指頭(ぼしとう)を強く押し付けながら深部の組織を輪を描くように環状に、または横走性にもむ方法で、場合によっては手のひらの縁で行うこともある。局所の循環を改善して硬結(しこり)の吸収や瘢痕(はんこん)の剥離(はくり)を促進させる手技である。

(3)揉捏(じゅうねつ)法 揉捻(じゅうねん)法ともいい、筋肉の一部または筋肉群をつかみ上げながら弧を描くようにこねてもむ方法で、求心性に行う。筋肉の機能を亢進させて萎縮(いしゅく)を予防するとともに、麻痺した筋肉の機能回復と血行をよくする。

(4)叩打(こうだ)法 手首を柔軟にして手のひらや指で両手を交互に上下しながら弾力的にリズミカルにたたく方法で、一般に筋肉の走行に沿って縦軸に直角にたたく。軽く速くたたくことにより筋肉に瞬間的収縮をおこさせ、筋機能の亢進と一時的神経の興奮を促す。

(5)振戦法 振動法ともいい、手指や手のひらを皮膚に当て、正調微細な振動をおこして機械的刺激を筋肉に急速に与える方法で、作用効果は叩打法に準ずる。市販の電動マッサージ器の類はこの振戦法を応用したもので、保健用に利用される場合が多い。

(6)圧迫法 指先や手のひらを用いて皮膚の上から間欠的もしくは持続的に圧迫する方法で、その強度や時間の長短によって神経の興奮や鎮静に役だち、自律神経系に作用させることもあるが、圧迫点(つぼ)に習熟する必要がある。指圧法や整体術は、これを応用したものである。

 なお、マッサージはあんまと異なり、皮膚に直接行うため、かならず衣服は脱ぎ、亜鉛華デンプンに香料などを混ぜたマッサージパウダーを皮膚に振りかけたり、ワセリンやオリーブ油などのマッサージオイルを使用する。また、マッサージの施行時間は局所で5~15分、全身で30~40分、通常1日に1回行う。

 マッサージの禁忌となるものは、伝染性疾患や化膿(かのう)性疾患をはじめ、結核症、出血性循環器性疾患、悪性腫瘍(しゅよう)、全身衰弱の強いときなどであり、医師の指示に従う必要がある。[永井 隆]

スポーツマッサージとは

一般に、そのスポーツによって酷使される筋肉や関節を目標として行うもので、手技としては、叩打法を主としたスウェーデン式や、揉捏法や振戦法を主にしたドイツ式などの術式に分けられるが、実際にはこれらの折衷式が多く用いられている。スポーツの前に行うのはウォーミングアップに準じたものであり、わずかな休憩時間中に手早く行うのは冷えからくるけいれんや急激にくる激しい筋疲労を除く目的のものである。競技終了後は入浴などで激しい筋疲労を除いてから全身に行われ、疲労の回復を促進させる。[永井 隆]

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